昔のアセクシャルの解説(2003年頃)

※2003年頃のasexual.jpに掲載していた、アセクシャルに関する解説です。現在とは事情が多少異なっておりますが、資料的価値があると思いますので掲載しています。

以下に書いてありますのは、あくまで「アセクシャルってなに?」という方のために2003年頃にasexual.jpが独断でとりまとめたものであって、決して一般的なものとは限らないことをご注意お願いいたします。

また、アセクシャルの表記は当時(2003年頃)の表記「Aセクシャル」のままにしております。

※現在のアセクシャルの解説はこちらです。

Aセクシャル とは 

ひょっとすると、初めて見られる言葉かもしれませんね。「Aセクシャル」(表現は他に「アセクシャル」「Aセクシュアル」「アセクシュアル」「エイセクシャル」「エイセクシュアル」などがあります。すべて英語の「asexual」から来ています。)というのは、一般的には

  男性および女性のどちらをも性愛の対象としない人、 もしくは性欲(性的欲求)そのものがない人、およびその性的指向(asexuality) (つまりは性的欲求が男性・女性のどちらにも向かず、または薄いこと、また前述のような状態の性指向・・・男女どちらも性的欲求の対象としないこと、を示しています。)

 とされています。もともと「asexual」という言葉は、生物学的に性別が存在しない(無性)ことや、性とは無関係であることを指し示す言葉でしたが、転じて上記のような利用がなされるようになったとされています。しかし、確立した統一的な利用はなされておらず(性的指向は人それぞれで幅がありますので、統一的利用は無理でしょう)、同じ「Aセクシャル」でも内容にはばらつきが見られるようです。なお、性的指向に特に注目した場合には「アセクシャリティ(asexuality/Aセクシャリティ/エイセクシャリティ)」の表現が使われることもあるようです。

Aセクシャルの語源は?

語源に関しては諸説ありますが、「asexual」という言葉の英語での意味が「無性の、無性生殖の(asexual production)(生物学の用語)」という意味を持っているというものや、「sexual」に否定の「a」を付けて「asexual」としたもの(英語での否定という説と、ラテン語で「a」が否定接頭語だからという説があります)などです。

様々な「Aセクシャル」

前述の通り、一口に「Aセクシャル」といっても人によってその内容は様々です。ここでは、多少強引にいくつかの国内外のサイトなどの書きこみを元に、分類分けをしてみたいと思います。ただ実際には人の性的指向というものは連続性をもったグラデーション状のもの(写真のような、虹のようで、区切りがあるようでない、区切りのはっきりしないものです)ですので、きちんと区切れるものではありません。敢えて自分を無理に当てはめる必要はなく、自分は自分であって良いものだと思います。なお、以下の内容は筆者の見解であって、統一的見解でないのでご注意お願いいたします。

性別(性自認)恋愛対象対象への性的欲求性指向
女性男性ありヘテロセクシュアル(異性愛)
なしヘテロセクシュアルのAセクシュアル(広義)
女性ありレズビアン
なしレズビアンのAセクシュアル(広義)
両性ありバイセクシュアル
なしバイセクシュアルのAセクシュアル(広義)
なし男性恋愛感情無しのヘテロセクシュアル
女性恋愛感情無しのレズビアン
両性恋愛感情無しのバイセクシュアル
なしAセクシュアル(狭義)
男性女性ありヘテロセクシュアル(異性愛)
なしヘテロセクシュアルのAセクシュアル(広義)
男性ありゲイ
なしゲイのAセクシュアル(広義)
両性ありバイセクシュアル
なしバイセクシュアルのAセクシュアル(広義)
なし女性恋愛感情無しのヘテロセクシュアル
男性恋愛感情無しのゲイ
両性恋愛感情無しのバイセクシュアル
なしAセクシュアル(狭義)
不明・無しなど誰かありわからないセクシュアルなど・・・
なしAセクシュアル(広義)
なし誰か恋愛感情無しのわからないセクシュアルなど
なしAセクシュアル(狭義)

と、大ざっぱに分けるとこんな感じです。なお、文中に出ている広義・狭義の意味は以下の通りであり、差別的に取り扱われるものではありません。また、狭義・広義という言葉からご理解いただけるように、極端な事例を挙げているもので、実際にはこのあいだにはいる方がほとんどだと思われます。

  • 狭義の「Aセクシャル」
     性的欲求は無く、恋愛感情もありません。この場合は他の人に抱く恋愛感情や性的欲求は無いために彼女・彼氏は居ないのが一般的なようで「レズビアンのAセクシャル」「ゲイのAセクシャル」(または両方まとめて「同性愛のAセクシャル」)「異性愛のAセクシャル」「バイセクシャルのAセクシャル」という表現は成り立たないと考えられます。
  • 広義の「Aセクシャル」
     特定の人に対して恋愛感情を抱くことはあるが、それは性的欲求に基づくものではなく、また性的関係を求めないものです。特定の人を彼女・彼氏としますが、性行為(人によっては身体的接触なども含む)は望まないか拒絶します。この場合は上記例と異なって、「レズビアンのAセクシャル」「ゲイのAセクシャル」(または両方まとめて「同性愛のAセクシャル」)「異性愛のAセクシャル」「バイセクシャルのAセクシャル」という表現が成り立ちます。「プラトニック」「淡泊」などの表現もありますが、同義だとする説と、さらに接触を拒む場合を「Aセクシャル」と表現する説もあるようです。

ところで、性的指向って? 

性的指向とは、「sexual orientation」の邦訳で、一般的には性的な欲求・欲望・意識がどの性に対して向かうのかということを表すとされています。それが同性に向かえば「同性愛(homosexual)」、異性に向かえば「異性愛(heterosexual)」、両性に向かえば「両性愛(bisexual)」ということになるとされています。こちらで取り上げている「Aセクシャル」もこの1つだと考えられますが、前述の通り複数の解釈がありますので(特に狭義と広義で性的指向のとらえ方が異なりますので)さらに複雑さを持ってくるようです。なお、性的指向も一刀両断的に切り分けられるものではなく、グラデーション状の連続性のあるものだとする説も有力に主張されています。
 おまけですが「性的指向」という言葉は日本の裁判所でも利用された言葉(参照:いわゆる「府中青年の家」訴訟判決。東京高判平成9年9月16日・判タ986-206および東京地判平成6年3月30日・判時1509-80)でもあります。

「Aセクシャル」ってどんな人? 

他のセクシャリティ(性的指向)の人たちと同様、どこにでも居ますし、男女問わずどちらにも居ます。
 しかし、他のセクシャルマイノリティ(ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、性同一性障害(GID)など)に比べるとあまり顕在化していないためなのか、認知度は低いと思います。(こちらのサイトではあまり知られていない「Aセクシャル」の存在を知っていただく目的も持っています。)

私は「Aセクシャル」?

ご自分のセクシュアリティはご自身にしかわからないものです。 また、性的指向というものは将来にわたって変化する可能性を持っている(他人が変化させることは出来ないが、変化することはある)ので、現時点での微分的な(その時によって違う)ものと考えられるのが良いと思います。